高校時代のひなと晴人、すれ違う想いの始まり
春の柔らかな日差しが校庭を包む4月、桜が満開の中、ひなは高校生活の第一歩を踏み出した。クラス替えで隣の席になったのは、小学校からの顔なじみ、晴人だった。ひなは心の中で小さくガッツポーズをした。実は、彼女は中学時代から晴人のことが気になっていたのだ。
「よろしく、ひな」と晴人が笑顔で声をかけてきた。その爽やかな笑顔に、ひなの心臓は早鐘を打ち始めた。「こ、こちらこそ、よろしくね」と返事をする自分の声が、少し上ずっているのが分かった。
高校生活が始まり、ひなと晴人は徐々に親しくなっていった。授業中のちょっとした会話、休み時間の雑談、放課後の部活動。二人の間には確かに特別な空気が流れ始めていた。しかし、そのことに気づいているのは周りの友人たちだけだった。
ひなは晴人のことを意識すればするほど、彼の前では素の自分を出せなくなっていった。一方の晴人は、ひなの態度の変化に少し戸惑いを感じていた。「ひなって、俺に何か怒ってるのかな」と、彼は悩み始めていた。
文化祭の準備が始まったある日、クラスでペアを組むことになった。ひなは内心で晴人とペアになれることを願っていたが、結果は違った。晴人は人気者のマリナとペアになり、ひなは別の男子とペアを組むことになったのだ。
準備の日々が続く中、ひなは晴人とマリナが楽しそうに話す姿を横目に見ながら、複雑な思いを抱えていた。「やっぱり、晴人くんはああいう明るい子が好きなんだ」と、自分に言い聞かせるように思った。
一方の晴人は、ひなが別の男子と仲良く作業する姿を見て、なぜか胸がモヤモヤとするのを感じていた。「ひなって、あいつのことが好きなのかな」という考えが、彼の頭をよぎった。
文化祭当日、ひなたちのクラスの出し物は大盛況だった。みんなで力を合わせた成果が、見事に実を結んだのだ。興奮冷めやらぬ放課後、クラスメイトたちと喫茶店に集まった。
にぎやかな店内で、ひなは晴人の隣の席に座ることができた。話に花が咲く中、ふと二人の手が触れ合う。その瞬間、ひなは心臓が飛び出しそうなほどドキドキした。晴人も、少し顔を赤らめている。
しかし、その甘い空気はほんの一瞬のことだった。マリナが晴人に話しかけ、晴人はすぐにマリナとの会話に夢中になってしまう。ひなは寂しさと焦りを感じながら、その様子を見つめていた。
帰り道、晴人はひなに声をかけた。「今日は楽しかったな。ひなと一緒に頑張れてよかったよ」
その言葉に、ひなの心は躍った。でも、次の一言で凍りついた。
「そういえば、マリナが言ってたんだけど、ひなって誰か好きな人がいるんだって?」
ひなは動揺を隠しきれず、「え?そ、そんなことないよ」と慌てて否定した。晴人は少し残念そうな顔をして「そっか、てっきり…」と言葉を濁した。
その日の夜、ひなは自分の部屋で天井を見つめながら考え込んでいた。「どうして素直に言えなかったんだろう」と後悔の念に駆られる。一方の晴人も、自分の部屋で同じように悩んでいた。「ひなの気持ち、聞けばよかったな」と。
二人の心は確実に近づいていたのに、すれ違いは深まるばかり。高校生活はまだ始まったばかり。この想いは、いつか交わる日が来るのだろうか。

大学進学で別れる二人、深まる想いと距離
高校卒業式の日、桜の花びらが舞う中、ひなと晴人は別々の道を歩むことになった。ひなは地元の国立大学に進学し、晴人は憧れの東京の私立大学へと旅立つ。別れ際、二人は互いに「頑張ってね」と声をかけ合ったが、その言葉の裏には言い表せない想いが隠されていた。
大学生活が始まり、ひなは新しい環境に戸惑いながらも、徐々に馴染んでいった。しかし、晴人との距離が遠くなったことで、高校時代には気づかなかった彼への想いの深さを痛感していた。LINEやSNSで時々連絡を取り合うものの、以前のような親密さは失われつつあった。
一方、晴人も東京での新生活に忙殺されながら、ふとした瞬間にひなのことを思い出していた。大学の友人たちと楽しく過ごす中で、彼女の優しさや笑顔が恋しくなることがあった。しかし、自分から積極的に連絡する勇気が持てずにいた。
夏休み、ひなは地元に帰省した晴人と再会する機会を得た。久しぶりに会った二人は、どこか照れくさそうに挨拶を交わした。カフェでお互いの近況を語り合う中で、ひなは晴人の姿が少し頼もしくなったように感じた。晴人もまた、ひなの笑顔に胸が高鳴るのを感じていた。
しかし、その再会も束の間のことだった。夏休みが終わり、晴人は再び東京へ。ひなは見送りの後、今までにない寂しさに襲われた。「やっぱり私、晴人くんのことが…」と、自分の気持ちに正直に向き合い始めた。
2年生になると、ひなは学業に打ち込む一方で、地元のNPOでボランティア活動を始めた。その活動を通じて、自分の将来の夢が少しずつ形になっていくのを感じていた。そんなある日、晴人からLINEが届いた。
「ひな、元気? 俺、インターンシップで地元に戻ることになったんだ。久しぶりに会えたらいいな」
その連絡に、ひなの心は大きく揺れ動いた。しかし、返信する言葉が見つからず、数日間返事を保留にしてしまう。その間に、ひなの周りの友人から「ひなには彼氏がいるんでしょ?」と聞かれる機会があった。動揺したひなは、つい「うん、まあね」と曖昧な返事をしてしまう。
その噂は瞬く間に広がり、晴人の耳にも入った。晴人は複雑な思いを抱えながら、ひなとの再会を楽しみにしていた矢先だっただけに、大きなショックを受けた。
結局、晴人が地元に戻ってきた際、二人は顔を合わせることができなかった。ひなは自分の嘘が原因で晴人と会えなくなったことを後悔し、晴人は「ひなには彼氏がいるんだ」と諦めの気持ちを抱えていた。
3年生になり、就職活動が始まった。ひなは地元での就職を考え始め、晴人は東京での就職を視野に入れていた。二人の人生は、ますます別々の道を歩み始めているように見えた。
しかし、運命はまだ二人の糸を完全に切り離してはいなかった。ひなが参加した就職フェアで、思いがけず晴人と再会する。驚きと喜びが入り混じる中、二人は久しぶりに言葉を交わした。
「久しぶり、元気だった?」と晴人。
「うん、元気…だよ」とひな。
その瞬間、二人の目が合い、時が止まったかのような感覚に陥る。心の中で渦巻く想いを、まだ口にすることはできなかったが、これが新たな始まりになるかもしれない。そんな予感が、二人の心に静かに芽生えていた。
社会人になって再会、高まる期待と葛藤
大学卒業から3年が経ち、ひなと晴人はそれぞれの道を歩んでいた。ひなは地元の広告代理店に就職し、地域の魅力を発信する仕事に携わっていた。一方の晴人は、東京の大手IT企業でシステムエンジニアとして活躍していた。
ある秋の週末、ひなは仕事で東京に出張することになった。久しぶりの東京、そして心のどこかで晴人との再会を期待していた。そんな中、偶然にも晴人から連絡が入った。
「ひな、東京に来てるんだって? 友達から聞いたんだ。せっかくだし、会えないかな」
ひなの心臓は大きく跳ねた。「うん、いいよ。会いたい」と返信する指が少し震えていた。
待ち合わせた渋谷のカフェで、二人は3年ぶりの再会を果たした。お互いを見た瞬間、高校時代の思い出が走馬灯のように駆け巡る。
「久しぶり、ひな。綺麗になったね」と晴人が微笑む。
「晴人くんこそ、大人っぽくなったね」とひなも返す。
話は尽きることなく続いた。仕事のこと、趣味のこと、そして昔の友人たちのこと。時間が経つのも忘れるほど、二人は昔のように打ち解けていった。
「ねえ、覚えてる? 高校の文化祭の時のこと」と晴人が切り出した。
ひなの頬が少し赤くなる。「うん、覚えてるよ。あの時、私…」
言葉が途切れる。晴人も何か言いかけて、口ごもる。
二人の間に沈黙が流れる。その沈黙の中に、言葉にできない想いが渦巻いていた。
「ひな、実は俺…」と晴人が口を開こうとした瞬間、ひなのスマートフォンが鳴り響いた。仕事の緊急連絡だった。
「ごめん、晴人くん。ちょっと出なきゃ」とひなは慌てて席を立つ。
電話を終えて戻ってきたひなに、晴人は「大丈夫?何かあったの?」と気遣う。
「うん、ちょっと仕事のトラブルで…」とひなは申し訳なさそうに答える。
その後も会話は続いたが、先ほどまでの親密な空気は消えてしまっていた。二人とも、言いかけて言えなかった言葉の重みを感じていた。
別れ際、晴人が言った。「ひな、また東京に来ることあったら連絡してよ。今度はゆっくり話そう」
ひなは微笑んで頷いた。「うん、ありがとう。晴人くんも地元に帰ってきたら連絡してね」
タクシーに乗り込むひなを見送りながら、晴人は心の中でつぶやいた。「やっぱり、俺…」
タクシーの中で、ひなも同じように思っていた。「私、やっぱり晴人くんのことが…」
それぞれの地に戻った後も、二人の心には再会の余韻が残っていた。LINEでの連絡は以前より頻繁になり、お互いの日常を少しずつ共有するようになった。
ある日、晴人から思いがけない連絡が入る。
「ひな、俺、地元の支社に異動になったんだ。来月から戻ることになりそう」
その連絡に、ひなの心は大きく揺れ動いた。喜びと不安が入り混じる複雑な感情。晴人も同じように、期待と戸惑いを感じていた。
社会人になって再会した二人。高まる期待と葛藤の中で、これからどんな関係を築いていけるのか。新たな章が、今まさに始まろうとしていた。
すれ違いの頂点、告白のタイミングを逃す二人
晴人が地元に戻ってきてから、ひなとの関係は急速に親密になっていった。休日にはカフェでお茶を飲んだり、映画を見に行ったり、まるで高校時代に戻ったかのような時間を過ごしていた。
ある週末、二人は地元の祭りに一緒に行くことになった。夏の夜空に打ち上がる花火を見上げながら、ひなは晴人に寄り添っていた。その瞬間、晴人はひなに告白しようと決心した。
「ひな、実は俺…」
しかし、その言葉は花火の音にかき消されてしまった。ひなは「え?何?」と聞き返したが、晴人は勇気を失ってしまい、「いや、なんでもない」と誤魔化してしまった。
翌週、今度はひなが決心を固めた。晴人を誘って、高校時代によく行った公園に向かう。夕暮れ時、二人はベンチに座り、懐かしい思い出話に花を咲かせていた。
「ねえ、晴人くん。私ね、ずっと言いたいことが…」
その時、晴人のスマートフォンが鳴り響いた。緊急の仕事の連絡だった。
「ごめん、ひな。ちょっと出なきゃ」と晴人は慌てて席を立つ。
電話を終えて戻ってきた晴人に、ひなは「何かあったの?」と気遣う。
「うん、ちょっと仕事のトラブルで…」と晴人は申し訳なさそうに答える。
その後も会話は続いたが、先ほどまでの親密な空気は消えてしまっていた。二人とも、言いかけて言えなかった言葉の重みを感じていた。
数日後、晴人の会社の同僚が地元に転勤してきた。その同僚は明るく社交的な女性で、晴人とすぐに打ち解けた。三人で食事に行く機会があり、ひなは晴人と同僚が楽しそうに話す姿を見て、複雑な思いを抱いた。
一方、晴人の部署に新しい男性社員が配属された。その社員はひなの仕事に興味を持ち、頻繁に連絡を取るようになった。晴人はそんな二人の様子を見て、何とも言えない気持ちになっていた。
ある日、晴人はひなを誘って告白しようと決意する。しかし、約束の日の朝、ひなから連絡が入った。
「ごめん、晴人くん。今日、急に仕事が入っちゃって…」
晴人は「そっか、仕方ないね」と返事をしたが、心の中では落胆していた。
実は、ひなも同じ日に告白しようと考えていたのだ。しかし、勇気が出ずに仕事を理由に逃げてしまったのだった。
その後、二人の間に少しずつ距離ができ始めた。晴人は同僚との付き合いが増え、ひなは新しい男性社員と仕事で忙しくなっていった。
LINEのやり取りも、以前ほど頻繁ではなくなっていった。「今日も忙しかった」「お疲れ様」といった表面的な会話が続く。二人とも、このままでは駄目だと感じていたが、一歩を踏み出す勇気が持てずにいた。
ある夜、晴人は一人で高校時代によく行った展望台に立っていた。街の灯りを見下ろしながら、ひなとの思い出を振り返る。「もう一度、ちゃんと伝えなきゃ」と心に誓った。
同じ時間、ひなも自宅のベランダで星空を見上げていた。「私、やっぱり晴人くんが好き。今度こそ、絶対に伝えよう」と決意を新たにしていた。
翌日、晴人とひなは同時に連絡を取り合おうとした。しかし、お互いの電話が交差し、なかなか繋がらない。やっと繋がった時、二人は同時に口を開いた。
「ひな、話したいことがあるんだ」
「晴人くん、私も話があるの」
二人の心臓は高鳴っていた。これまでのすれ違いを乗り越え、ついに想いを伝える時が来たのだろうか。それとも、新たなすれ違いの始まりなのだろうか。運命の瞬間が、今まさに訪れようとしていた。
運命の再会、ついに結ばれるひなと晴人の想い
晴人とひなの電話は、互いの緊張と期待で始まった。しかし、話そうとした瞬間、突然の雷鳴が響き、回線が切れてしまう。再びかけ直そうとするが、お互いに相手の電話に出られず、またしてもタイミングを逃してしまった。
翌日、晴人は仕事の出張で東京へ向かうことになった。ひなとの大切な話は、帰ってきてからにしようと決心する。一方、ひなは晴人に連絡が取れないことに不安を感じていた。
出張から3日後、晴人が地元に戻る電車の中。突然の豪雨により、電車は途中駅で長時間の停車を余儀なくされた。スマートフォンの電池も切れかけ、ひなに連絡することもできない。
その頃、ひなは晴人の会社を訪ねていた。しかし、晴人が出張中だということを知り、落胆して帰路につく。雨に打たれながら歩くひなの心は、不安と寂しさでいっぱいだった。
「もしかして、晴人くんは私のことをもう…」
そんな思いが頭をよぎった瞬間、傘をさしていなかったひなは、足を滑らせて転んでしまう。ちょうどその時、近くを走っていた車が水たまりを踏み、ひなに水しぶきをかけてしまった。
ずぶぬれになったひなが立ち上がろうとした時、見覚えのある声が聞こえた。
「ひな!大丈夫か?」
振り返ると、そこには晴人が立っていた。電車が動かなくなったため、タクシーで帰ってきた晴人だった。
「晴人くん…」
「ごめん、連絡できなくて。電車が止まっちゃって…」
二人は雨の中、見つめ合った。そして、同時に口を開いた。
「ひな、俺…」
「晴人くん、私…」
言葉が重なり、二人は思わず笑顔になる。晴人はひなを抱きしめ、耳元でささやいた。
「ひな、俺、ずっと前から好きだった。高校の時から、ずっと…」
ひなの目から涙があふれ出る。
「私も…私も晴人くんのことが好きだった。ずっと、ずっと…」
雨は二人の周りで降り続いていたが、もはや気にする様子もない。長年のすれ違いを経て、ついに二人の想いは一つになった。
その後、二人は近くのカフェに駆け込んだ。ずぶぬれの姿で座り、お互いの気持ちを確かめ合う。高校時代からの想い、大学での別れ、社会人になってからの再会。すべての出来事が、この瞬間のために存在したかのように思えた。
「ねえ、晴人くん。私たち、随分と回り道をしたね」とひなが言う。
晴人は優しく微笑んで答えた。「うん。でも、その分だけ大切な思い出ができたんだ」
カフェの窓の外では、雨が上がり始め、美しい虹が架かっていた。
それから1年後、晴人とひなは同じ高校の文化祭で再会した場所で結婚式を挙げた。招待された友人や家族たちは、二人の長年のすれ違いと、最後に結ばれるまでの物語に感動していた。
式の最後、ひなが晴人に向かって言った。
「晴人くん、私たちのストーリー、まだまだ続くよね」
晴人は満面の笑みで答えた。「ああ、これからが本当の始まりだ」
二人は手を取り合い、新たな人生の一歩を踏み出した。高校時代から続いた長いすれ違いは、こうして幸せな結末を迎えた。そして、ひなと晴人の新しい物語が、今まさに始まろうとしていた。

『きみの全てを奪うまで』の‘ストーリーパート’完結編となります。
ストーリーのみの構成となり、本編にエロシーンは一切ありませんのでご注意ください!!是非、ひなと晴人のすれ違い続けた想いの結末をお楽しみください!!
本編78ページ、レナのおまけストーリー14ページの構成となります
※エロのみを楽しまれたい方は、今後配信される「5」にご期待ください。
そちらはほぼすべて濃厚な絡みシーンをお届けいたします!!!
コメント